心筋梗塞(MI)マウスは偽手術(sham)マウスに比べ心エコー上、左室内腔は拡大し、左室駆出率は低下していた。また非梗塞部の左室壁厚は肥厚を認めた。心重量/体重比、肺重量/体重比はMIマウスにてshamマウスに比べ増加しており、心不全状態となっていることが確認できた。MI群では非梗塞部の心筋肥大、間質線維化、アポトーシスの亢進を認め、心筋リモデリングが進行していた。筋梗塞後の非梗塞部心筋細胞におけるミトコンドリア形態を電子顕微鏡で観察したところ、ミトコンドリアサイズが減少し、ミトコンドリア数は増加していた。 次に、非梗塞部におけるDrp1とMitofusion1の蛋白発現レベルとWestern blot方にて評価した。Drp-1とMitofusion1の蛋白発現レベルはいずれもMIとshamマウスにおいて有意な差を認めなかったが、Mitofusion1はMIマウスにおいて高い傾向であった。さらに、心筋梗塞後の心筋におけるミトコンドリア形態制御因子であるOPA1、Fis1の蛋白レベルをwestern blot法にて評価したところMI群でsham群に比べて有意差はなかった。一方、Drp1はリン酸化で制御されているが、Drp-1を抑制するリン酸化に関してはwestern blot法にて増加していた。 心筋梗塞後の非梗塞部心筋細胞におけるミトコンドリア形態はサイズが減少し、数が増加していた。ミトコンドリア形態制御蛋白であるMitofusin1の発現は増加傾向であった。ミトコンドリア形態はミトコンドリア機能と関連していることから、心筋リモデリングにおいてミトコンドリア形態制御が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今までの研究から心筋リモデリングの進展にNox由来の酸化ストレスが重要であることが明らかとなっているが、心筋細胞においてNox4をノックダウンするとミトコンドリア形態が変化することから(preliminary data)、Nox4由来酸化ストレスがミトコンドリア形態を制御していることが推察された。
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