研究課題
近年、傍腫瘍性症候群において抗神経抗体が多数同定されている。筆者らは抗体のみならず、その下流のシグナル伝達まで検討することによって抗体が異なっても神経症状の表現型が同一であるような疾患群を想定している。またその病原性を呈するシグナル伝達が同定することが可能となれば、炎症性疾患のみならず変性疾患においてもシグナル伝達を制御する薬物の同定により薬物治療へ結びつく可能性も期待している。昨年度は質量分析計・HEK293T細胞株を用いて自己免疫性小脳失調症の原因の一つの可能性として抗Sez6l2抗体を同定した。その成果は「Identification of anti-Sez6l2 antibody in a patient with cerebellar ataxia and retinopathy.」としてJ Neurol. 2014 Jan;261(1):224-6. に報告とした。また2013年度日本分子生物学会でも発表した。現在、さらにその研究を発展させ、抗体の病原性の有無を検討している。Sez6l2は膜タンパク質の可能性があり、シグナル伝達に関与している可能性などを想定し、その結合タンパク質を同定することを目標としている。現在質量分析計を用いて結合候補タンパクを同定し、その機能を検討している。
2: おおむね順調に進展している
新規自己抗体Sez6l2の機能を検索するために、結合タンパク質を質量分析計を用いて検討した。その結果結合タンパク質Yを内在性での結合を同定できた。そのタンパク質Yはリン酸化がシグナル伝達に影響している可能性が以前の他施設から報告されている。そのため現在、申請者はSez6l2の過剰発現系でタンパク質Yのリン酸化が制御されるかどうかを検討している。また近年傍腫瘍性症候群において抗神経抗体が多数同定されている中で、筆者らは抗体のみならず、その下流のシグナル伝達まで検討することによって抗体が異なっても神経症状の表現型が同一であるような疾患群を想定し、上記検討を行っている。そのためその病原性を呈するシグナル伝達が同定することが可能となれば、炎症性疾患のみならず変性疾患においてもシグナル伝達を制御する薬物の同定により薬物治療へ結びつく可能性も期待している。
1)抗Sez6l2抗体の病原性の検討:病原性の検討のため、前述のようにSez6l2の分子生物学的なメカニズムを検討しており、現在結合タンパク質の同定まで行った。Sez6l2がこの結合タンパク質のリン酸化を制御するかどうかを現在過剰発現系で検討している。この再現性が確認できた後には①患者血清を用いてその制御機構が変化するかどうかを検討する、②Sez6l2のノックダウン細胞を作製し、より生理的な機能解析を行う、の2点を検討していく。2)他症例での抗Sez6l2抗体の有無の検討:傍腫瘍性症候群は複数の自己抗体をもつことが示されている。そのため傍腫瘍性症候群が疑われる他の小脳失調患者血清に抗Sez6l2抗体が認められるかどうか検討している。
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J Neurol.
巻: 261(1) ページ: 224-6
10.1007/s00415-013-7134-5.