本研究で免疫介在性小脳失調症の一部にはSez6l2抗体を示す患者が存在することが確認された。Sez6l2タンパク質はⅠ型膜たんぱく質である。そのため、本抗体が病原性を示す可能性がある。そのため、本研究では、小脳失調患者血清の抗Sez6l2抗体はSez6l2タンパク質の細胞外ドメインを認識するかどうかも検討し、患者血清は細胞外ドメインを認識することが示された。また市販の抗Sez6l2抗体とマウス小脳を用いた質量分析計でSez6l2の結合候補タンパク質を同定し、さらに分子細胞学的にSez6l2はADDと結合することが示された。ADDはAMPA受容体の下流シグナル伝達の可能性が他論文で示唆されており、またSez6l2と同様のドメインを持つタンパク質群はグルタミン酸レセプターの補助サブユニットの可能性が報告されている。そのためSez6l2とGluR1との結合を検討したところ、細胞外ドメイン同士で直接結合することを発見した。さらに興味深いことに患者血清はこのリコンビナントタンパク同士の結合を阻害した。以上より、患者血清はAMPAからADDのシグナル経路を阻害する可能性が考えられた。これらの研究内容を神経免疫学会年次集会で発表し、現在論文投稿準備中である。
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