研究実績の概要 |
骨組織が感覚臓器として眼や耳のように複数の細胞で構成される神経情報伝達機構を持つと考え、メカノセンサーである骨細胞からの感覚刺激の伝達により、成長板付近の軟骨細胞で神経伝達物質の産生が誘導され、求心性神経を介して脳へと神経刺激が入力されるとの仮説を明らかにすべく以下の研究を行った。 ・マウス軟骨前駆細胞株ATDC5ではTH遺伝子発現が確認できなかったため、8-9週齢のマウス大腿骨および頸骨から成長板軟骨細胞を抽出し軟骨細胞分化誘導試薬添加下で培養してTH遺伝子発現を検討したが発現確認はできなかった。さらに、生後2-3日のマウス大腿骨および頸骨から抽出した成長板軟骨細胞でも発現検討を試みたが発現は確認できなかった。 ・成長板軟骨細胞がTHを利用してカテコラミンを合成しているか否かを調べるためにglyoxylic acid法にて蛍光染色を行ったが、サンプル調整が難しく実験が難航している。 ・上記のように神経関連因子として注目したTHでは実験が難しかったため、Brain derived neurotrophic factor(BDNF), Glial cell derived neurotrophic factor(GDNF)にも注目して発現検討を行ったところ、ATDC5およびマウスより抽出したprimaryの細胞でGDNFの発現が確認され、軟骨分化に従って発現が上昇していくことを確認した。 ・GDNFはRETとコレセプターであるGFRα1を介してシグナル伝達することが知られている。GDNFシグナルが軟骨細胞自身にautocrineに働くのか、他の骨の細胞(骨芽細胞や骨細胞)もしくは神経細胞にparacrineに働くのかを確認するために現在様々な細胞株を用いてレセプターの発現検討を行っている。
|