平成26年度は以下の実験を行った。 まず、オートファジー関連分子についてヒト皮膚の免疫染色を行った。正常皮膚では、オートファジーのkey moleculeであるLC3Bは表皮顆粒層でもっとも強く発現していた。また基底層でも染色が確認されたが、有棘層はほとんど染まらなかった。表皮の他、メラノサイト、毛包上皮、汗腺、脂腺といった付属器の腺細胞、毛細血管内皮細胞もよく染まっており、オートファジーが様々な物質合成に関与していることが改めて示された。乾癬やアトピー性皮膚炎といった表皮が肥厚する疾患においては、顆粒層での発現がより強くみられ、表皮肥厚による顆粒合成の亢進を反映していると考えた。有棘細胞癌では症例によって発現に差があり、腫瘍細胞の起源に由来する可能性が示唆された。また、ヒト培養表皮角化細胞をToll様受容体(TLRs)刺激因子(リガンド)1-9で刺激した後RNAを抽出しrealtime-PCRを行ったところ、LC3Bについて、TLR9リガンドで細胞を刺激した際に発現が増強する傾向が見られた。ATG5、ATG12といったオートファジー関連分子の発現に変化は見られなかった。 高カルシウム培地で分化させたヒト培養表皮角化細胞で同様の実験を行ったが、安定した結果が得られなかった。さらに、カセリサイディンで刺激した細胞について、共焦点顕微鏡を用いた細胞内オートファジー関連分子の観察を試みたが、安定した結果は得られなかった。
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