ヒト脂肪組織から単離したMuse細胞を色素細胞に分化誘導することに成功した。 外科的手術の際に廃棄された余剰脂肪を1型コラーゲナーゼで酵素処理をすることによって、脂肪組織に存在する脂肪幹細胞を単離した。この脂肪幹細胞をstage specific embryonic antigen 3(SSEA-3)で染色し、FACSによりSSEA-3陽性細胞を選別することにより脂肪組織由来Muse細胞を樹立した。 脂肪組織由来Muse細胞をWnt3a、stem cell factorなど10種類の試薬を含む誘導培地で6週間培養した結果、形態が色素細胞様になり、ヒト色素細胞とほぼ同レベルの色素細胞特異的な遺伝子、タンパク質の発現をしていることが確認された。また、この6週間培養した細胞をメラニン細胞刺激ホルモン(a-MSH)を含んだ誘導培地で、さらに3週間培養すると色調が黒色調に変化した。誘導後のMuse細胞はL-DOPA反応に陽性であった。以上のことから、脂肪組織から単離されたMuse細胞から色素細胞が誘導できることが分かった。 このMuse細胞由来色素細胞を混ぜた3次元培養皮膚を作成し、H.E染色や免疫組織化学法で検討したところ、Muse細胞由来色素細胞は基底層に局在しており、tyrosinase、gp100など色素細胞特有の蛋白質を発現していた。また色素細胞周囲の角化細胞を観察した結果、gp100の陽性が確認できたため周囲の細胞にもメラニンの移譲を行っていることが分かった。以上により、脂肪組織由来Muse細胞から作成した色素細胞は生体内でもヒト通常色素細胞と同様の機能的役割を持ちうることが示された。
|