West症候群は乳児期に発症する年齢依存性難治性てんかんであり,シリーズ形成性スパズム、脳波上のヒプスアリスミア、精神運動発達遅滞を三徴とする。国際抗てんかん連盟の分類では全般てんかんに属しているが、画像、代謝、電気生理学的検査で異常の目立つ領域の切除により発作が消失するなど、発作焦点の存在を示唆する知見が集積されている。本研究では、脳磁図・脳波・筋電図を組み合わせてWest症候群のスパズム発作を記録し、スパズムの原因となる皮質焦点の同定を目的とした。我々はまず、正中神経刺激に対する大脳皮質の誘発電位および磁界において、巨大誘発反応をしめす症例に着目した。なぜならこの巨大反応は、てんかん病態における皮質過敏性の存在を直接的に示唆する所見と考えたからである。また先行研究において、この巨大反応と、てんかん性突発波の生成機序に何らかの関係があることも示唆されていた。巨大反応を示すてんかん症例において、一定の強度と刺激頻度下に両側正中神経刺激を行い、この間の自発脳波・自発脳磁図を計測したところ、刺激による脳活動が棘波様の活動として明確に観察される場合とそうでない場合とが認められた。前者の場合、脳磁図による信号源解析により、その活動が中心溝後壁の一次体性感覚野に由来することが確認された。この所見は正確な結果解釈や病態推定に重要な知見と考えられた。同時に脳磁図が大脳神経生理を非侵襲的に検討するための重要手法であることが改めて示唆された。我々が用いた手法は、将来、ウエスト症候群や他の小児難治てんかん症例における発作焦点の同定において有益なツールになることが示唆された。
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