本研究の目的は、外傷患者の止血能、特に高齢者の特徴について、および血小板数や凝固因子測定では評価できない凝固線溶動態と止血能との関連について解明することである。近年増加している高齢者外傷への対策は医療費の面からも社会的課題である。高齢者は若年者と比べて出血制御が困難であるが、従来の血液検査(血小板数、凝固因子)は実際の止血能を評価できないのが問題であった。一方、Rotation Thromboelastometry (ROTEM)を用いれば、実際の止血能とその過程の異常の評価が可能である。 対象患者を16歳以上の外傷症例で、Abbreviated Injury Score (AIS)が3以上の外傷を有する重症外傷症例とし、来院時、来院 3 時間後および24時間後にROTEMによる止血能の評価と同時に凝固線溶系因子、Alarminsを測定した。これらの測定データと臨床情報を組み合わせ、高齢者の止血能の特徴を解析する予定である。 1年間、上記対象症例のデータを蓄積してきた。さらに平成26年度の1年間も症例集積を継続する。 平成25年度に集積した症例の中で、特徴的な症例について「Rotation Thromboelastometry (ROTEM)による凝固異常の評価をもとに出血制御戦略を施行した多発外傷の2例」と題して、平成26年度の臨床救急医学会で発表する。 また以下の論文を執筆した。久志本成樹、工藤大介、大村拓、眞田千穂. 外傷急性期凝固異常の早期予測. 外傷蘇生のControversies救急医学 2013; 37(5): 568-574
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