研究概要 |
がん抑制遺伝子PTENの変異や欠損により種々のがんが発症する。申請者は、哺乳細胞におけるホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3P)産生酵素をコードする遺伝子Pik3c3とPtenのT細胞種特異的二重欠損マウスを樹立し、Pten単独欠損マウス(以下、Pten欠損マウスとする)において発症するがんが、このPten/Pik3c3二重欠損マウス(以下、二重欠損マウスとする)においては抑制されるという知見を得た。本研究の目的は、Pten欠損に起因する発がんが、Pik3c3をも欠損することにより抑制されるメカニズムを明らかにし、新たながん治療へとつながる知見を得る事である。 昨年度、Pten欠損マウスにおいて亢進するAktのリン酸化が、二重欠損マウスにおいては抑制されていることを見出した。Aktのリン酸化が抑制されていたことから、二重欠損マウスにおいては、Pten欠損に起因するPI(3,4,5)P3の蓄積から回復している事が考えられた。しかしながら、in vivo における PIPs 定量解析を行ったところ、予想に反して二重欠損マウス胸腺細胞においても、Pten欠損マウスと同様に PI(3,4,5)P3の蓄積が認められた。今日までPten欠損によるがんは、PI(3,4,5)P3の蓄積により惹起されるAktのリン酸化亢進に帰結されてきたが、本知見によりAktのリン酸化亢進にはPI(3,4,5)P3の蓄積のみならずPik3c3も必要である可能性が示唆された。
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