これまでに濾胞性リンパ腫で認められるt(14:18)転座の発生過程の検討をするための実験系確立のため、cell sortを行ったマウスPro-B cellとOP9細胞との共培養系、また53BP1ノックアウトマウスの樹立を行った。昨年度、ChIP-seq解析を行うにあたり、次世代シークエンサーIon Protonの使用を試みたが、技術的なトラブルにより、Illumina社のNextSeqを使用する必要があり、その条件設定のため時間が必要であった。また核内のDNA構造を規定するため、4C-seqアッセイによりIgH遺伝子座とBcl2遺伝子座との物理的接触頻度を検出したところ、Pro-B細胞において、二つの遺伝子座は必ずしも近くに位置しないということがわかった。このことから物理的な位置関係は副次的な要因であり、IgH遺伝子座のVDJ recombinationによる切断、およびBCL2遺伝子座の切断がIgH-BCL2転座のより大きな規定因子である可能性が示唆された。当初の計画ではこのBCL2遺伝子座の切断要因および切断の頻度をRAGノックアウトマウスや53BP1ノックアウトマウスからのPro-B細胞を用いて解析をする計画であったが、実験系の確立に想定以上の時間を要しており今後の課題として残った。このBCL2遺伝子座がなぜ切断を受けるのかという問題はこの研究分野の昔からの疑問点であり、今後の研究により明らかにしたいと考えている。
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