研究課題
研究活動スタート支援
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)AML05臨床研究に登録された485例の患者のうち、急性巨核芽球性白血病(M7)を除く検体の得られたAML330例の検体を用いて、EVI1遺伝子および遺伝子Xの発現量をリアルタイムPCRで測定し、臨床情報との照合を行った。その結果、AML99研究同様、遺伝子Xの高発現例は、予後不良な病態をもつAMLのサブグループを形成していた。また、EVI1はこれまで予後不良とされているMLL遺伝子再構成症例と強い相関がみられた。EVI1、遺伝子Xの高発現症例は概ね相互排他的であり、EVI1または遺伝子Xを高発現している症例は、両者ともに低発現の症例に比べ有意に予後が不良であった。遺伝子X高発現例は、低リスク群にはほとんど認められず、中間リスクまたは高リスク群に多く同定された。遺伝子異常や染色体異常との関係については、これまで予後不良因子とされているFLT3-ITDやMLL-PTDなどと強い相関がみられた。また、正常核型AMLなど、これまでに既知の予後因子(明確な染色体異常や遺伝子異常)が同定できない症例は、現在のプロトコールでは中間リスク群に層別化されており、この群の再発、原病死亡は大きな課題である。本研究においてEVI1と遺伝子Xの発現に注目した予後予測方法は、明確な染色体異常、遺伝子異常を同定できない症例に対しても非常に有効かつ簡便、しかもリアルタイムに行える手法であり、早期に予後不良群を抽出することを可能とし、造血幹細胞移植などの強力かつ適切な治療を行うことは、再発症例の予後が極めて不良であることからも、救命の可能性が大きく向上するものと考えられた。また、これまで予後不良群として移植されていた患者が、この方法で予後良好群と考えられれば、化学療法の低減、移植の回避が可能となり、QOLの改善につながるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)AML05臨床研究に登録された患者のうち、検体の得られたAML症例の遺伝子解析については、KIT、RASをはじめ、様々な遺伝子変異情報がこれまでに蓄積されており、平成25年度に施行したEVI1と遺伝子Xの発現測定の結果と臨床情報を組み合させることにより、特にこれまで予後予測の困難であった正常核型を中心に新たな予後予測法の抽出に成功した。今後、小児AML(ひいては成人のAML)の予後層別化を大きく変えていける技術であると確信しており、現在、さらなる詳細な層別化を可能にすべく、データを詰めていく段階に入っており、計画は順調に進行している。
現在、上記、リアルタイムPCRで予後不良と考えられる遺伝子X高発現症例の中で、正常核型を中心に分子生物学的な背景が不明な症例に対してRNAシークエンスを行い、通常の染色体分析では同定できない新規の遺伝子再構成(微小な遺伝子再構成や均衡型の遺伝子再構成)の同定を行っている。さらに、Target sequenceを施行することで、さらなる網羅的な遺伝子変異解析を施行し、そのプロファイルを明らかにする。RNAシークエンスにおいても、exon内の未知の遺伝子変異を同定することも可能であり、得られた遺伝子再構成、遺伝子変異に対して、RT-PCRとSanger sequencingで再構成または変異の確認を行う。また、再発症例の検体を用いて、遺伝子解析を行い、初発、寛解時の遺伝子異常と比較を行うことで、再発時に特異的な遺伝子異常を見出し、その背景も併せて解明したいと考えている。
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Genes Chromosomes and Cancer
巻: 52(11) ページ: 683-693
10.1002/gcc.22064.