研究課題
研究活動スタート支援
平成25年度は、脳を構成している細胞と脳腫瘍細胞それぞれの放射線に対する感受性の違いについて明らかにすることを目的とした。正常のマウス神経幹細胞HKNSCおよびヒト神経膠芽腫細胞A172を用いて、X線および炭素線による増殖と細胞死誘発率を指標とした放射線感受性の違いについて検討を行った。細胞播種後翌日にX線(200 kV)照射を行い、照射後96時間まで24時間毎に細胞数を計数し、増殖曲線を作成した。両細胞ともに線量が高くなるにつれて増殖率の低下が見られた。また、HKNSCはA172に比べて、増殖率が顕著に低下した。さらに非照射群が対数増殖を示している照射後72時間において、非照射群の増殖率を1とした時の各照射群の増殖率から線量-増殖率曲線を作成し、増殖率が50%となる線量でHKNSCとA172の放射線感受性比較したところ、HKNSCはA172の約4倍感受性である事が分かった。さらに、照射後の後期アポトーシスおよびネクローシス誘発率を算出したところ、HKNSCではアポトーシスの寄与が高く、ネクローシスはほとんど誘発されなかった。一方、A172ではアポトーシスの誘発はほとんどなく、ネクローシスの寄与も低かった。これらの結果は炭素線照射(290 MeV, 拡大ブラッグピーク60 mmの中心点)でも同様の傾向が見られた。よって、正常組織と脳腫瘍組織の細胞間で放射線感受性が著しく異なること、そして誘発される細胞死のモードが異なる事を明らかにした。
3: やや遅れている
大学内に設置・利用していたX線装置が昨年後期より施設改修の為に使用出来なくなってしまったため、X線照射実験がやや遅れ気味である。
今後の実験系として異種細胞間のバイスタンダー効果について検討を行う予定であるが、平成25年度までに使用してきたマウス神経幹細胞とヒト神経膠芽種細胞の組み合わせで、予備的に共培養実験を行い、細胞死の検出を行ったところ、照射された神経膠芽種細胞から非照射の神経幹細胞への細胞死の誘発が見られなかった。この理由の一つとして、動物種の違いなどが考えられたため、平成26年度はヒト神経幹細胞を用いて実験を遂行する。ヒト神経幹細胞に関して、放射線照射による増殖と細胞死への影響について検討を行い、共培養実験を試みる。また、神経幹細胞から分化させた分化細胞に関しての影響をみるため、分化誘導条件の検討を並行して行う。
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