研究課題
研究活動スタート支援
本研究課題では、IL-6,IL-27に対するCD4 T細胞の反応をモデルとして用いて、複数のSTATsの活性化により調節されるサイトカインの多様な生理作用のメカニズムを解明することを目的として研究を行っている。具体的には、両サイトカインによって誘導されるトランスクリプトームについて詳細な解析を行うとともに、STAT1とSTAT3の遺伝子発現制御の分子機構について、STATsを介したクロマチンのエピジェネティック変化に着目し研究を進めている。さらに、STAT1機能獲得変異患者の末梢血より分離したCD4 T細胞を用いて、STATsバランスが破綻している状態におけるサイトカインレスポンスの変化を解析している。本年度は、IL-6とIL-27がCD4 T細胞において誘導する遺伝子発現の異同をRNA-Sequence(RNA-Seq)法で調べた。この結果、IL-6によりその発現レベルが著明に変化する遺伝子群、及びIL-27によりその発現レベルが著明に変化する遺伝子群を全ゲノムレベルで定量的に測定することに成功した。さらにIL-6とIL-27刺激での遺伝子発現パターンへのSTATsの関与をSTAT1およびSTAT3遺伝子欠損CD4 T細胞を用いて調べた。その結果、STAT1は、トランスクリプトーム形成におけるIL-6,IL-27の特異性を規定している一方、STAT3は、それぞれのサイトカインで誘導される遺伝子発現自体を規定していることを明らかにした。つまり、異なるSTATsが遺伝子発現機構において、それぞれ特徴的な役割を担っていることを明らかにした。これらを踏まえ、今後は1.STAT1遺伝子変異患者において、それぞれのサイトカインの特異性が増しているのかどうか、2.サイトカインレスポンスの変化が、どのように病態形成に結びついているのかについて解析を進める。さらには3.今回我々が用いた解析手法が他のサイトカインでも有用かどうかについてtype1 IFNを用いて解析する。
1: 当初の計画以上に進展している
IL-6とIL-27が誘導する遺伝子発現の異同をRNA-Sequence(RNA-Seq)法で調べた。マウス脾臓由来のCD4 T細胞をIL-6とIL-27で刺激することによって誘導される遺伝子発現パターンの異同について次世代シークエンサーを用いたRNA-Sequence(RNA-Seq)法で実験データを得た。 得られた実験データについては当研究室でバイオインフォマティクスの手法を用いて解析した。さらにIL-6,IL-27刺激での遺伝子発現パターンへのSTATsの関与をSTAT1およびSTAT3遺伝子欠損CD4 T細胞を用いてRNA-Seq法を用いて調べた。その結果、STAT1は、トランスクリプトーム形成におけるIL-6, IL-27の特異性を規定している一方、STAT3は、それぞれのサイトカインで誘導される遺伝子発現自体を規定している事を明かにした。
1.STAT1遺伝子変異患者において、それぞれのサイトカインの特異性が増しているのかどうか、2.サイトカインレスポンスの変化が、どのように病態形成に結びついているのかについて解析を進める。さらには3.今回我々が用いた解析手法が他のサイトカインでも有用かどうかについてtype1 IFNを用いて解析する。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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