研究実績の概要 |
【背景】我々はヒト臨床における肺切除後の代償性肺成長(CLG)を画像的に仮想肺重量として評価してきた(JTCVS 2013, Surgery Today 2013)。 【目的】CLG現象が既に証明されているマウスにおいて、仮想肺重量が関連することを証明し、さらにCLG関連遺伝子変化を解析することでCLGの実態解明に寄与する。 【方法】成体マウスC57BL/6(9週齢)の左肺全摘モデルを作成し、経時的(術後3/7/30POD)な右残肺の形態変化、肺胞密度(肺胞壁間距離)、マイクロCTによる仮想肺重量(容積x密度)、網羅的遺伝子発現を解析した。遺伝子発現は2倍以上に増加した遺伝子を有意としGene OntologyおよびPathway解析を行った。形態・画像解析では開胸群を、遺伝子解析では摘出した左肺をコントロールとした。 【結果】1)右残肺の湿重量・容積は経時的に増大し、特に心臓葉で顕著であった。2)仮想肺重量も同様に増加傾向を示した。3)組織学的肺胞密度は低下し、画像的密度と相関していた。4)細胞増殖、血管新生、神経・胸膜の増殖・分化に関連する遺伝子群が、3POD、7PODで発現増強しており、30PODには収束した。この傾向は心臓葉で顕著であった。肺胞の新生・分化に関する遺伝子群はほとんど変化しなかった。 【考察】1)マウス肺全摘モデルで術後早期のCLGが確認された。2)仮想肺重量は臨床的CLGの評価に応用できる可能性が示唆された。3)我々のラットにおける研究 (JTCVS 2012)と同様にマウスCLGにおける肺胞新生は示唆されなかった。
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