研究実績の概要 |
微小管重合中心である中心体は細胞分裂期において二極性の紡錘体極として機能することにより染色体の均等分配に本質的な役割を果たしている。正常細胞では細胞周期1回につき1度だけ中心体複製が起こる様に厳密に制御されているため、中心体数は1または2個に維持されている。一方多くの癌細胞ではストレス刺激等により容易に中心体数の異常が惹起されることが報告されている。中心体数の異常は染色体の不安定性(染色体不均等分配)を誘発するため癌の悪性度を高める要因として知られているが、これまでストレス刺激に伴って中心体数の異常が起こる分子機構に関しては不明であった。 我々らはこれまでに、ストレス応答MAPK(SAPK)経路とp53経路が協調して中心体複製を制御しており、ストレス環境下での染色体安定性の保持に重要であることを見出した(Nature Commun., 2013)。 また我々はストレス環境下においてSAPKが中心体の過剰複製を抑制する機能があることを見出している。今回我々はSAPKを介して中心体過剰複製を抑制する分子機構を解明するため、SAPK標的分子の探索を行った。その結果、複数の候補分子を同定することに成功し、SAPKによるリン酸化部位の特定にも成功した。更にSAPK標的分子がリン酸化される生理的意義に関しても解析を行っており、SAPKによる同標的分子のリン酸化が中心体複製を抑制する効果がある知見も得られている。 また申請者はPLK4の中心体移行機構の解明も試みており、同分子の中心体輸送に関わる制御分子を複数同定することに成功している。またこれらの制御分子とPLK4との相互作用等を解析することにより、PLK4の中心体移行機構が分子レベルで明らかになりつつある。
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