研究課題
1.NASH発癌におけるストレスシグナルの役割前年度の結果より小胞体ストレス軽減薬がNASHの病態を改善することがわかったが、さらにシャペロン分子であるGRP78をアデノウイルスを用いて高脂肪食負荷MUP-uPAマウスに発現させたところ、同様に有意に肝脂肪化が抑制された。これらの結果から本マウスモデルにおいて小胞体ストレスがNASHの病態を直接的に悪化させていることが明らかとなった。次に小胞体ストレス応答シグナルの病態進展における役割を解析するため、小胞体ストレス応答シグナルの中でも、特に細胞死誘導に重要な役割を果たすと考えられているCHOPの肝細胞特異的欠損マウスを作成し、MUP-uPAマウスと交配させた。しかしながら予想に反して、CHOP欠損はNASHの病態には大きな影響を与えず、肝発癌がむしろ増加することがわかった。小胞体が異常蓄積した細胞が適切な細胞死を起こすことは、肝発癌を抑制する方向に働くことが推察された。2.NASH発癌における炎症シグナルの役割TNFR1欠損マウス由来の肝癌前駆細胞をMUP-uPAマウスに移植し高脂肪食を与えたところ、腫瘍細胞でTNFR1が欠損しているだけにも関わらず、有意に肥満による肝癌促進効果が抑制された。TNF阻害剤でも同様の結果が得られた。そのメカニズムとして、肥満状態下においてはTNFによる腫瘍細胞のNF-kB活性化を介したtumor-associated inflammationが亢進した状態となっており、腫瘍内での炎症性サイトカインや増殖因子の発現が増加していることが一因と考えられた。実際にNF-kB上流のIKKbを肝癌前駆細胞でKOしたところ、やはり有意に肥満による腫瘍増大効果が抑制された。TNFシグナルはNASH・肥満関連肝癌の治療標的となり得る可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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