顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は最も患者数の多い型の筋ジストロフィーの1つである。原因遺伝子候補であるDUX4がコードするDUX4-flは転写因子タンパク質であり、DNA結合ドメイン依存的に細胞毒性を示すこと、細胞毒性にはDUX4-flのC末端領域が不可欠であることが明らかとなっていた。昨年度、DUX4欠失変異体を用いてC末端の負に荷電した領域が細胞毒性に重要であることを明らかにした。本年度はその領域を酵母2ハイブリッド系ベクターにクローニングし、ヒトcDNAライブラリーに対する結合タンパク質スクリーニングをおこなった。しかしながら、DUX4C末端融合タンパク質の発現は酵母細胞内においても細胞毒性を示し、酵母の育成を阻害した。さらにDUX4C末端と融合したGal4 DNA結合ドメインは高い転写活性を示したため、擬陽性の酵母コロニーが多数育成してしまった。この条件下ではスクリーニングが困難であると判断したため、方針を転換し、GST融合DUX4C末端タンパク質をベイトとしたGSTプルダウン法によるスクリーニングに切り替えて実験をおこなった。様々な条件検討をおこなった結果、GST融合タンパク質の発現と精製に成功した。GST融合DUX4C末端をベイトとして、ヒト横紋筋肉腫細胞株の細胞破砕液をプレイとしてGSTプルダウンをおこなった結果、銀染色においてDUX4C末端に結合したと思われる低分子量のタンパク質バンドを得た。さらにスケールを増やし、質量分析を用いて同定する予定である。
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