本研究では、造血器悪性腫瘍の1つである骨髄増殖性腫瘍で高頻度に見られるJAK2遺伝子のV617F変異によりもたらされる病態、とりわけ同疾患の発症、急性骨髄性白血病への進展機序を解明することを目的とした。具体的には骨髄増殖性腫瘍細胞から過剰分泌されるリポカリン-2という因子に注目し、その働きを解析した。まず、同因子はパラクライン作用により正常造血細胞にDNA損傷を誘導し、このことが遺伝子変異の蓄積、白血病発症に寄与しうることを示した。さらに、リポカリン-2はDNA損傷に伴うp53経路の活性化により正常造血系を抑制することで、骨髄増殖性腫瘍の発症に寄与することを示した。
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