本研究者は、慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)患者よりエピゾーマルベクターを用いてOCT3/4、SOX2、KLF4、L-MYC、LIN28、p53-shRNAを導入し、CMMoL患者由来iPS細胞(CMMoL-iPSCs)を樹立した。患者検体と同様の染色体異常やEZH2変異、NRAS変異、RUNX1変異もiPS細胞でも確認された。CMMoL-iPSCs由来造血コロニーではCD34陽性の造血幹・前駆細胞、CD13陽性の骨髄系細胞の増加を認めた。更に、CMMoL-iPSCs由来血球は、コロニー形成のreplatingやサイトカインなしでの培養が可能であった。これらの結果は、CMMoL-iPS細胞由来血球が元のCMMoLCsの白血化能を反映していることを示していると考えられた。CMMoL-iPSCsをOP9細胞株とともにiPS細胞を免疫不全マウスの皮下に移植すると、形成された奇形腫内および骨髄内で造血幹・前駆細胞が生じた。テラトーマ内のCD34陽性CD45陽性の造血幹・前駆細胞を免疫不全マウスに2次移植したところ、CD13陽性の単球細胞やCD34陽性細胞の芽球が認められ、患者検体と同様のEZH2変異、NRAS変異、RUNX1変異を持っており、患者由来ヒト型CMML-iPSCs由来マウスモデルを作製した。この疾患iPS由来テラトーマを介したヒト化マウスモデルの手法は、CMMoL-iPSのみならず、その他の疾患由来iPSにも応用可能であり、汎用性があると考えられた。CMMoL-iPSCs由来血球は、pERKの活性化を来しており、RAS阻害剤やMEK阻害剤によるRAS/MEK/ERKシグナルの阻害により、増殖が阻害された。CMMoL-iPSCs由来血球を用いたRAS/MEK/ERKシグナルの制御が治療標的となる可能性が示唆された。
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