本研究では、まず血管障害後の内膜肥厚の形成過程において、炎症反応の収束がもたらす効果に関して着目し、抗炎症性脂質メディエーターが血管障害後の炎症反応を収束させ、その結果として内膜肥厚が抑制されるかを検討するを目的としている。 内膜肥厚の検討には動物モデルを用いており、ラット頸動脈のバルーン擦過モデルを作製し、擦過直後と2日後に外側尾静脈よりレゾルビンD1 1μgを静注する群と、そのコントール群として生食(0.1%エタノール)を静注する群を対照として内膜肥厚の比較を行っている。擦過14日後に潅流固定後に頸動脈の標本を採取し染色を行い、内膜肥厚の形成の評価は新生内膜/中膜の面積比(NI/M比)を用いて評価をしている。現在、治療群とコントロール群で各々5匹ずつの検体を採取して比較を行っており、NI/M比はコントロール群とレゾルビンD1投与群で各々1.273±0.273、0.874±0.143(p値=0.053)で、レゾルビンD1投与群の方がコントロール群に比較して内膜肥厚の形成が抑制される傾向がみられた。また中膜面積に関して治療群とコントロール群で差はみられていない。各群をさらに数例ずつ追加して統計学的な比較検討を行う必要がある。同じ抗炎症性メディエーターであるプロテクチンDに関しても同様の投与方法で検討を開始している。 一方、細胞培養を用いてレゾルビンの細胞に対する影響も検討している。現在ラット大動脈の平滑筋細胞の培養を行っており、レゾルビンD1やプロテクチンDを投与した培地と投与していないコントロールの培地で細胞増殖の比較検討をこれから行う予定である。
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