後鼻神経切断術のモデルラット作成し、鼻アレルギーにおける神経制御の果たす役割を検討した。昨年度に引き続き、後鼻神経切断後の鼻粘膜呼吸上皮における変化を組織学的、分子生物学的に検討した。またこの後鼻神経切断術がアレルギー性鼻炎の病態に及ぼす影響について検討した。 後鼻神経切断側の鼻腔呼吸上皮において神経線維マーカー、アセチルコリントランスフェラーゼ、各種の神経ペプチドの消失が確認された。アセチルコリンのムスカリン受容体は切断による変化はなかった。神経切断側では鼻前庭の乾燥が観察され、鼻汁量は減少していた。免疫染色とコリン作動薬を用いた実験から、後鼻神経は副交感神経の脱神経をもたらし、鼻汁分泌減少を引き起こすことが確認された。 後鼻神経切断後の組織の経時的な変化としては、鼻粘膜呼吸上皮において後鼻神経切断後3か月から1年において神経線維が再生してきていることが確認された。 次にアレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断の影響を検討した。アレルギー性鼻炎モデルの作成としてラットをオボアルブミンを用いて感作を行い、この動物に対し後鼻神経切断術を行った。この検討では後鼻神経切断術は、アレルギー症状(くしゃみ、鼻掻き)の改善はもたらさず、粘膜組織の肥厚や炎症細胞の浸潤にも効果は認めなかった。アレルギー反応のmRNAも変化は認めなかった。一方でアレルギーモデルにおいても鼻汁分泌は抑制されていた。 これらの知見は、日常診療では行われているがエビデンスの少ないヒトに対する後鼻神経切断術の病態を解明するのに臨床的な意義が大きい。またこのモデル動物を検討することは神経と免疫反応の相互作用を調べる有用な手段になると考えられた。
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