日本とスウェーデンは,いずれも高齢心不全患者が増加しており,効果的・効率的な心不全管理のあり方が重要な検討課題となっている.また両国は世界的にも情報通信技術が発達した国といえる.近年,遠隔医療機器を用いた心不全管理に関する研究が欧米を中心に報告されているが,その実態は明らかでない. そこで本年度は,テレモニタリングを用いた心不全疾病管理のあり方を検討するため,非侵襲的テレモニタリングの使用実態,テレモニタリングに関する期待,テレモニタリング実施の障壁を明らかにする目的で,日本とスウェーデンの循環器内科医および看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した.質問項目はオランダで実施された先行研究をもとに作成された.調査参加者は,日本より378名,スウェーデンより120名であった.わが国で心不全テレモニタリングを実施している施設は非常に少なく(4.2%),スウェーデンではいずれの施設も導入していなかった.またテレモニタリングについてよく知っていると回答した割合は全体の24%であった.テレモニタリングに対する期待では,再入院の減少と患者のセルフケア向上が最も高かった.内容分析の結果,テレモニタリング導入の障壁として,組織,医療専門職,患者の三つのドメインが抽出された. 本調査により,医療専門職はテレモニタリングに対する期待を有している一方,テレモニタリングの認知度は高いとはいえず,導入施設は非常に少なかった.今後は,本結果をもとにテレモニタリングに対する医療従事者の認知度を高めるとともに,テレモニタリング導入に関する障壁について対応することで,わが国の効果的・効率的な心不全疾病管理プログラムの構築に寄与していきたいと考える.
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