研究課題/領域番号 |
25893060
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯坂 真司 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40709630)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 低栄養 / ドライスキン / 高齢者 / 看護学 / 介護予防 |
研究概要 |
本研究は、地域在住高齢者に対し、①栄養状態・食事摂取量と皮膚脆弱性(ドライスキン・掻痒症)との関連の検討、②皮膚脆弱性のリスクアセスメント尺度の開発を目的とした。 H25年度は、研究初年度として、調査準備及び初年度調査を実施した。文献レビューに基づき、栄養状態と皮膚に関連する生活習慣、皮膚状態の調査項目を精選した。栄養状態の評価項目は、低栄養評価(MNA)、食事摂取量(BDHQ)、身体計測とした。皮膚に関連する生活習慣として、洗浄行動、入浴習慣、保湿剤の使用行動、日光保護行動、日光暴露状況を想定し計29項目を作成した。皮膚状態は角質水分量、マイクロスコープによる皮膚表面の形態分析、高周波超音波による真皮評価、画像解析による皮膚色、乾燥・かゆみに対する主観的評価(VAS)、医療者による他覚的評価尺度(ODS, SRRC)とした。皮膚の測定部位は下腿前面とした。他覚的評価尺度は研究者1名が日本語に翻訳し、異なる研究者1名が確認した後、逆翻訳を行い、訳の妥当性を確認した。 調査デザインは横断研究であり、平成25年10月~H26年3月に計三か所の住民健康イベント内にて実施した。対象者は65歳以上の地域住民とした。本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号10277)。 H25年度に、85名から調査票を回収した。平均年齢74.1歳、女性84.7%であった。MNAによる低栄養リスクありは28.0%、低栄養は2.5%であった。角質水分量25未満のドライスキンは65.1%に認められた。予備解析として、角質水分量と主観的評価、他覚的評価尺度の併存妥当性を検証した。角質水分量とODS、SRRCは有意な負の相関を示したが、VASとの相関は認められなかった。高齢者に対しては、VASは乾燥肌の個人間比較に適さない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度は研究計画の立案、研究デザインやデータ収集内容の選択、測定機器等の調達、調査施設の募集・調整、倫理審査、調査者の事前トレーニング等の諸手続きを整え、順調に調査を遂行することができた。当初、2か所での調査の予定であったが、対象者数確保及び地域差の検討のため、3か所に調査場所を拡大した。現在、初年度に取得した画像データの解析、質問紙調査結果の入力、データクリーニング、予備的解析を実施している段階である。以上の結果の一部は、国内学会等で報告し、国際誌へ投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、第一に、対象者数を増やし、データ収集を継続する。次に、得られたデータを分析し、皮膚脆弱性に関連する栄養状態、皮膚の生活習慣を早期に評価できるリスクアセスメント尺度を開発し、その構成概念妥当性、基準関連妥当性やカットオフ値を評価する。 研究デザインは横断研究であり、前年度の対象者を継続評価するとともに、住民健康イベント内にて、Validation sampleとして新規対象者50名程度を機縁法により募集する。調査項目、測定部位は前年度と同様とする。今年度は画像検査項目より皮膚脆弱性のパラメータの解析・抽出を行う予定であり、具体的には皮溝・皮丘の形態では、皮溝の太さ、平行度、間隔、皮膚色ではLab系、Erythema index, Melanin index、高周波超音波による真皮構造では真皮の厚み、平均輝度、低エコー領域に着目する。 解析として、まず、前年度参加者のデータを用い、ドライスキン(または掻痒感)有群と無群における食事摂取量、栄養状態、皮膚に関連する生活習慣の差をt検定またはχ2乗検定、年齢等を調整したロジスティック回帰分析等により検討し、皮膚脆弱性に関連する要因を抽出する。次に、候補要因に対し、探索的因子分析による因子構造の確認を通じて、項目の精選および点数の重み付けを行い、リスクアセスメント尺度を作成する。尺度の合計点、下位項目点数と皮膚脆弱性の関連をt検定により評価し、ROC曲線を用いた皮膚脆弱性に対するアセスメント尺度のカットオフ値を設定する。次に、新規対象者であるValidation sampleに対して、同様の解析を実施し、皮膚と栄養の関係性について関連の再現性を評価する。また、前年度と今年度調査を実施した対象者に対し、生活習慣の変化と皮膚状態の変化の関連を検討する。
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