本研究は、地域在住高齢者に対し、①栄養状態・食事摂取量と皮膚脆弱性(ドライスキン・掻痒症)との関連、②皮膚脆弱性のリスクとなる生活習慣を評価することを目的とした。 調査デザインは横断研究であり、都市部、漁村部含む計3地区の住民健康イベントに参加した65歳以上の地域住民を対象とし、128名から調査票を回収した。平均年齢は73.5歳、女性は85.9%であった。本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号10277)。皮膚の測定部位は下腿前面とし、20Mhz超音波画像の真皮輝度、他覚的皮膚所見尺度、角質水分量を評価した。栄養状態は低栄養(MNA-SF)、サルコペニア、肥満により評価した。栄養素摂取量は簡易式自記式食事歴法質問票にて調査し、1000kcal摂取あたりに換算した。皮膚に関連する生活習慣として、洗浄行動、入浴習慣、保湿剤の使用行動、日光保護行動、日光暴露状況に関する質問紙を作成した。 栄養障害の該当率は低栄養2.9%(リスク29.1%)、肥満33.0%、サルコペニア3.6%(リスク32.5 %)であった。栄養状態と皮膚の関連の解析では、真皮輝度高値には1000kcalあたりのαトコフェロールとビタミンCの摂取量の多さが、輝度低値にはBMI25以上の肥満が関連していた。皮膚所見尺度得点悪化の関連要因として、植物性脂質摂取量の少なさ、低栄養リスクが抽出された。 次に、生活習慣と皮膚の関連を解析した。角質水分量高値の関連要因は、保湿ローションの使用、日光保護行動高頻度であり、角質水分量低値の関連要因は、石鹸の量を多めに使う、固形石鹸の使用、加湿器の使用であった。日光保護行動高頻度と夏の外出時間1時間未満は皮膚所見尺度得点の良さにも関連していた。角質水分量と関連する栄養要因は抽出されなかった。 以上より、皮膚脆弱性の予防に対する栄養管理の重要性が示唆された。
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