歯科補綴修復治療においてジルコニアセラミック修復が広く浸透してきている。ジルコニアの中でもイットリア安定型正方晶ジルコニア多結晶体(Y-TZP)が広く用いられているが、最近ではさらに物理的強度に優れたセリア安定型正方晶ジルコニア多結晶体・アルミナナノ複合体(ナノジルコニア、Ce-TZP/Al)が用いられてきている。 本研究の意義は、ナノジルコニアのクラウンフレームワークに最適な形態を検討し、ジルコニアの臨床応用の拡大に寄与することである。ジルコニアセラミッククラウンにおけるジルコニアフレーム形状を変化させることによりクラウンの破壊強度にどのような影響を及ぼすかについて、ナノジルコニアとY-TZPの2種類のジルコニア材料を用いて検討を行った。 補綴装置に審美と機能の双方が要求される上顎第二小臼歯を被験歯とし、メラミン模型歯をクラウン支台歯形成、コンポジットレジン支台歯模型(レジン支台築造・天然歯を想定)を複製し、各種ジルコニアクラウンフレームワークを舌側サポート形状付き0.3mm厚、0.5mm厚で作製、支台歯にジルコニアフレームを接着性レジンセメントで合着した。試料には歯軸方向に荷重し、破壊時最大荷重を測定した。その結果、舌側サポート形状付き0.3mm厚のナノジルコニアクラウンフレームワークは0.3mm厚、0.5mm厚のY-TZPフレームワークより有意に高い強度を示した。 ナノジルコニアを用いた薄いフレーム厚みでのジルコニアセラミッククラウンの応用可能性が示唆された。このことは支台歯形成量の削減、歯髄保護や歯髄腔の大きな若年者での臨床応用の拡大につながり、Minimal Interventionの観点からも有益である。
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