研究概要 |
骨の増生は顎骨疾患を有する患者のQOL向上のために非常に重要であるが、現在患者自身の侵襲を伴う自家骨移植の他に、有効な方法は確立していない。近年、骨誘導タンパク質であるBMPの臨床応用の報告は散見されるが、経済的な問題や添加後のBMPのコントロールなど様々な問題が残されている。これらの問題を解決するためにBMPの制御解析は極めて重要である。前回我々はBMP制御因子としてvon Willebrand factor C domain-containing protein 2-like (Vwc2l)を同定し、骨芽細胞の石灰化へのVwc2lの作用とそのメカニズムの解析を行った。MC3T3-E1細胞において、Vwc2lの発現は特に石灰化の過程において誘導されることが判明した。同細胞にVwc2lを安定的に遺伝子導入したところ、より多くの石灰化小槐の形成が認められた。またVwc2l蛋白質をMC3T3-E1細胞に添加することによって骨形成に重要な転写因子であるOsterixの発現が有意に上昇することも確かめられた。また、Vwc2lはTGFβスーパーファミリー分子群において、TGFβ1,2,3,Activinと結合するが、BMPとは結合しないことが判明した。今回の研究では、VWC2LによってMC3T3-E1細胞のOsterixタンパクの発現の上昇を確認した。次にVWC2Lを安定的に分泌するMC3T3-E1細胞のクローンにTGFβを作用させ、TGFβスーパーファミリーの下流シグナルであるリン酸化smadの発現の変化を解析した。VWC2Lを発現しないEVクローンではVwc2L発現クローンと比較してsmad2のリン酸化が促進された。以上よりVWC2LはTGFβに結合することによりTGFβの下流シグナルを抑制していることが示唆された。
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