研究実績の概要 |
これまでわれわれはラット臼歯の咬合刺激を低下後、矯正力を用いて移動する実験系において、咬合刺激の低下が歯根膜における退行性変化をもたらし、咬合刺激低下歯を矯正力を用いて移動した場合、正常咬合歯とは異なる移動様相を呈しCD31・VEGF-A ・VEGFR-2 の発現に影響を与えることを明らかとしてきた。しかし歯根膜組織の修復・再生過程においては血管新生に関し、血管内皮細胞へのVEGF-A・VEGFR-2 の関与や他組織での未分化幹様細胞への発現は報告があるが、その他の歯根膜細胞への関与は報告されていない。そこで本研究では、①VEGF によるVEGFR-2 誘導に着目した、歯根膜組織の再生・修復機構の解明、②咬合刺激低下歯に対する適切な矯正力の検討、③分子生物学手法を用いた咬合刺激低下歯における虚血障害の予防、という3 点について細胞培養実験、疾患動物モデルを用いて研究計画の立案を行った。 ①についてヒト・テロメラーゼ遺伝子(hTERT 遺伝子)を安定発現させた不死化歯根膜細胞クローン細胞の作製を試みたが、思うような結果が得られなかったため、歯根膜細胞を継代培養し3,4世代を用い実験を行った。 ②③に関しては、以前よりわれわれの実験モデルとして用いているラット咬合刺激低下モデルを用い12週齢より2週間咬合刺激を低下させ、LIPUSを用いて咬合刺激低下に対する賦活効果を検証した。評価方法として、micro-CTを用いた歯根膜、歯槽骨の形態学的評価、免疫染色、PCRによる炎症性サイトカイン、骨発現マーカーによる組織学的、生化学的評価を行った。 これらの成果は2016年に開催される92 th Congress of the European Orthodontic Societyにて発表予定である。
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