研究概要 |
歯周炎と全身性疾患の関連については過去に多くの報告がされてきたが、未だそのメカニズムについては不明な点が多い。これまでに歯周炎とメタボリックシンドロームとの関連、さらにはメタボリックシンドロームと腸内細菌叢の変化が関係していることが示された。本研究では、口腔から消化管へととりこまれた歯周病原細菌が腸内細菌叢を変化させ、それにより腸管免疫の活性化もしくは代謝組織の異常をもたらすことで、全身の臓器に炎症状態を惹起しているというメカニズムをTRPチャネルに着目して解明することを目的とする。 本研究ではこれまでに、歯周病原細菌経口感染マウスモデルを作成し、各種臓器におけるTRPチャネルの発現について解析を行った。その結果、腸管や肝臓のTRPチャネルの発現が歯周病原細菌感染により変動することが示された。またこれに加え、感染時の腸内細菌叢の変化についても更に詳細な検討を進めている。 続いて上記の実験結果をもとに、in vitroで特定のTRPチャネルに対するアゴニスト、アンタゴニストを使用し、細菌由来の刺激に対するTRPチャネルの炎症調節作用について遺伝子、タンパクレベルでの解析を行っている。TRPノックアウトマウスを用いた感染実験についても準備中であり、今後歯周病原細菌による全身への炎症の誘導にTRPチャネルが果たす役割をvivo, vitroの両面から明らかにしていく予定である。 本研究の成果は、歯周炎のみならず関連する各種全身性疾患をも対象とする、TRPチャネルタンパクをターゲットした予防・治療の新規薬物の開発につながるポテンシャルをもつ。
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