研究課題
初期化４因子（Oct3/4、Sox2、Klf4、Myc）を体細胞に遺伝子導入することで、分化の逆戻りともいえる人工多能性幹細胞（iPS細胞）の樹立が可能になった。しかし、iPS細胞樹立過程が単に分化過程の逆戻りかどうかは明らかにされていない。分化過程は組織ごとに特異性があり、iPS細胞樹立経路が単に分化過程の逆戻りであれば組織指向性が維持されている可能性がある。本研究では、組織特異的な組織幹細胞に焦点をあてることで、iPS細胞樹立過程における組織指向性の有無を明らかにすることを目的とした。対象臓器は毛包細胞とした。まず、毛包細胞からのiPS細胞樹立を試みた。レトロウイルスによって毛包細胞に初期化因子を遺伝子導入させたところ、iPS細胞樹立が可能であった。しかし、その効率は非常に低く、感染効率改善のための条件検討に時間を要した。次に、毛包細胞からのiPS細胞樹立過程と毛包幹細胞ステージの関係を検討した。毛包細胞からのiPS細胞樹立過程において、mRNAおよびタンパク質レベルで毛包幹細胞マーカーの一過性の上昇が認められた。さらに、lineage tracing解析の結果、毛包からのiPS細胞樹立過程において、毛包幹細胞ステージを通過してiPS細胞様コロニーになる集団が認められた。以上から、組織特異的な幹細胞ステージを通過しながらiPS細胞樹立経路を辿る細胞が存在することが明らかとなった。組織幹細胞とiPS細胞樹立経路の新たな関係性を示唆する結果だと考えられる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Cell
巻: 156(4) ページ: 663-677
10.1016/j.cell.2014.01.005.
