本年度は、アディポネクチンと同じくアディポサイトカインとして同定されたレジスチンに注目した。すなわち、バイオインフォマティクス解析により、後天的ゲノム修飾が血中レジスチン濃度に如何なる影響を与えるのか、発現パスウェイの調査・解明を目的とした。本研究では、北名古屋市住民コホート(北名古屋ゲノム疫学研究: KING Study、NCT00262691)の中でメチル化アレイ(Illumina HumanMethylation450)を測定した男性・非糖尿病患者192名を対象に、血中レジスチン濃度に関連するDNAメチル化サイトを探索した。Batch effectを初めとする本研究に悪影響を与え得るバイアスは、複数のバイオインフォマティクス解析手法を活用する事で可能な限り取り除き、一般化線形モデル(GLM)を使用して、レジスチン濃度と関連するメチル化サイトの探索を行った。結果として、レジスチン濃度とP < 1.0 x 10の-8乗で関連するサイトを1カ所同定した。 更に、過去に測定したSNPデータを用いて、レジスチン濃度に寄与するDNAメチル化サイトとの関連を調査したところ、有意な関連が観測された。 レジスチンの分泌異常である高レジスチン血症は、アディポネクチンと同様肥満や高血圧、2 型糖尿病、メタボリックシンドローム、心筋梗塞など様々な病態において認められ、これらの生活習慣病の発症および進展に深く関与する。本研究で同定されたSNP-メチル化―レジスチンの関係性は病態解明のあらたな知見となる。
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