研究課題/領域番号 |
25893090
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山崎 正俊 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (30627328)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 心房細動 / 心房梗塞 / 光学マッピング |
研究概要 |
超高齢者社会を迎え爆発的に増加しつつある心房細動は、脳梗塞発症や心不全による入院治療、QOL低下をもたらし、大きな社会問題となっている。しかし、心房細動を含む心房性不整脈における不整脈基質としての心房梗塞の重要性に関する知見は極めて乏しい。 本研究の目的は、家兎心房梗塞モデルにおいて、心房細動発生・維持の機序を評価し、不整脈発現の基になる陳旧性心房梗塞とリモデリング心房筋を誘因とする心房細動に対する新たな治療法開発への手掛かりを見出すことである。さらに、心臓内視鏡を用いた心房内・外膜同時光学マッピングシステムを用いて心房全体の巨視的興奮伝播現象を細胞膜電位変化として捉え、三次元位相解析や波面解析などの手法による定量的な時空間解析法を用いて、心筋組織における興奮波伝播のダイナミクスを包括的に解明することを目指している。 本年度は心臓内膜・外膜光学マッピングシステムを用いて実験動物摘出灌流心における心房細動維持に及ぼす3次元旋回興奮(スクロール)波の役割と局在に関する検討を行い、心臓の解剖学的構造物(心房櫛状筋)に沿って3次元スクロール波が移動することを確認し、日本循環器学会年次集会において報告した。同時に、陳旧性心房梗塞に伴う心房細動モデル作成システムを構築し、モデル作成を開始、同実験を継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は陳旧性心房梗塞がない群における心房細動発生・維持における3次元旋回興奮(スクロール)波の果たす役割の解明を行い報告した。 さらに、陳旧性心房梗塞モデル作成のためのシステムを構築し、予備実験も順調に開始されている。 「陳旧性心房梗塞誘発心房細動は虚血境界領域に定在化する3次元旋回興奮(スクロール)波によって維持され、定在化の解除によって細動が停止する」という仮説を証明するために、活動電位光学マッピング画像から得られた心房細動画像を詳細に解析し、旋回中心の高集積部位を容易に描出する解析法を確立した。同解析法を用いて陳旧性心房梗塞誘発心房細動を停止に導く新規の治療法を模索することができると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
申請者は、「心房細動の発生・維持機構に与える陳旧性心房梗塞の役割を解明し、新たな治療法を模索する」ことを本研究の目的とし、昨年度中は陳旧性心房梗塞誘発心房細動モデル作成のためのシステムを構築し、同モデルの作成を開始した。 さらに、比較対照群としての心房梗塞がない群における心房細動発生・維持に及ぼす3次元旋回興奮(スクロール)波の動態解明に成功している。おおむね順調に研究は進展しているが、いまだ陳旧性心房梗塞誘発心房細動モデルの作成数は少数であり、心房梗塞誘発心房細動モデルにおける特殊な興奮様式とその発生頻度、持続時間、解剖学的構造物と興奮波の位置関係の評価は不十分である。つまり、陳旧性心房梗塞誘発心房細動を早期停止に導く条件を決定し、3次元コンピューターシミュレーションを用いて高周波通電のための領域、部位を決定する段階に至っていない。 当年度は①心房梗塞誘発心房細動モデル作成数を増やすことに重点を置く、②同時に、比較対照群も含めて、心筋に対する高周波通電による電気生理学的特性変化(静止膜電位の上昇、活動電位持続時間の短縮等)に関する評価を行う。③上記の結果を踏まえて新規の治療法を模索する。
|