神経筋接合部は、agrin及びWnt ligandによりアセチルコリンレセプターが筋表面で凝集する事で形成される。Agrinは運動神経端末から放出されるが、普遍的に発現するWnt ligandがどのように神経筋接合部の空間的位置づけを行っているかは不明であった。今回我々は、分泌蛋白であるR-spondin2 (Rspo2)が運動神経端末から分泌され、Wntシグナルを調節する事で、神経筋接合部の形成に大きく関わる事を同定した。まず、6週齢のC57BL6 / Jマウスの脊髄運動神経細胞(SMN)をレーザーマイクロダイセクションを用いて摘出し、遺伝子発現を分析したところ、 Rspo2が特異的にSMNに発現していた。in situハイブリダイゼーションによってRspo2の発現を確認すると、Rspo2はSMNに特異的に発現していた。次にRspo2欠損マウスを解析すると、マウスは呼吸困難のため出産直後に死亡した。Rspo2欠損マウスでSMNsの数をカウントすると、コントロールと変わらなかったが、運動神経枝である横隔神経枝の長さ及び分岐数を増加させていた。更にRspo2 -/-マウスでNMJの形成を分析すると、E14.5での野生型マウスにおけるスレッド状のエンドプレートとは対称的に、 Rspo2 欠損マウスの終板は、中央が透明で紡錘状を呈していた。Rspo2 -/-のNMJの超微細構造を電子顕微鏡を用いて観察するとactive zoneの減少を認め、活動電位にも異常を認めたためNMJ機能不全が示唆された。HEK293細胞におけるJNK-ATF-2ルシフェラーゼ(ATF2 -luc)レポーターを使用して、MuSKの活性化に対するRspo2の効果を評価しすると、Rspo2はagrinの80% 活性化し、MuSKのリン酸化を増強した。MyotubeにおけるAChRのクラスタリングでも同様の結果が得られた。
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