研究代表者は2007年からインターネットのテレビ電話を利用して、在宅生活をおくる認知症高齢者とその家族へのコミュニケーション支援を行ってきた。その経験を活かし、本研究では介入内容として音楽に焦点を当て、音楽療法士の監修の下、馴染みのある在宅空間での音楽療法的介入を行ってきた。音声と画像を同時に送受信できるテレビ電話の特性は、本研究を実施するのに最適のものであり、我々チームはテレビ電話における音声・画像情報の遅延に対しても工夫し、対面式により近い音楽療法的介入の実施を可能にした。 本研究での参加対象者は、認知症と診断されて通院治療中の高齢者で、介護者と同居しており、自宅においてインターネットのテレビ電話を接続し操作が可能な家庭とした。また必要に応じて機器の貸与と操作方法の説明を行った。介入は看護師である研究代表者が行った。対象者の選定は研究協力機関病院において行い、認知症の重症度で層分けし、割付を行った。群分けした介入方法の内容は、週1回約30分間のテレビ電話による音楽療法的介入を8週間行う群と、音楽CDの鑑賞を8週間行う群とした。音楽CDの介入を行ったのは研究代表者で、音楽CDは対象者の好みを音楽療法士が聞き取りを行い、オーダーメイドで作成した物を用いた。テレビ電話での介入を行う群にもオーダーメイドの音楽CDを作成し、各群共に自分の好きな時間に週1回以上の鑑賞を行い、鑑賞した時間を用紙に記入していただいた。各群の介入前後には認知機能テスト、認知症の行動・心理症状の程度等の測定を行った。
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