研究代表者は在宅療養をおくっている認知症がある高齢者に対して、テレビ電話を用いて遠隔で音楽療法的介入を行った。介入の内容は、各々の高齢者の好みに合わせて作成した音楽CDを基に、介入者(研究代表者)と高齢者が遠隔で一緒に歌唱を行うものであった。週1回30分のテレビ電話による音楽療法の交信を8週間継続し、その後4週間の休止期をおき、その後は対照として音楽CDを8週間鑑賞するのみの期間をとった。各期間の前後にはBPSDや笑顔度(スマイルスキャン)の評価と、自己記入式のアンケート調査を行った。 介入の結果、テレビ電話による音楽療法はBPSDを減少させる傾向や、笑顔度が上昇する効果が示唆された。しかし休止・対照期間を経ると元に戻る傾向がみられた。アンケート調査では、認知症がある高齢者・介護者ともに気分が晴れる効果と満足感が得られており、認知症の進行抑制効果も期待されており、必要性が感じられていた。テレビ電話による音楽療法は、認知症がある高齢者にとって慣れ親しんだ自宅で受けられる利点があり、患者・介護者の満足感を得られたが、認知症がある高齢者・介護者のwell-beingを保つには継続した介入が必要であるといえる。
|