研究実績の概要 |
本研究課題は初年度、1)1990~2010年の脳卒中罹患率を明らかにする事を目的とし、滋賀県高島市で実施されている高島循環器疾患発症登録のデータを用いて、1990~2010年の脳卒中罹患率(初発)の推移を検討した。結果、日本人の脳卒中罹患率が引き続き減少傾向にあることを明らかにした。 最終年度は2)罹患率の年次推移に与える時代効果・コホート効果を明らかにするとともに、3)将来の罹患者数を推計し、年次推移を予測した。 解析対象者は本データべース内の20歳代の脳卒中発症者がわずかであることから(男女計:6名)30歳以上とした。1990~2009年の30歳以上の脳卒中発症(初発)の推移に対する年齢・時代・コホート効果は、Age-period-cohort modelを用いて検討した。年齢効果は、男女とも年齢が上昇するにつれ増加した。時代効果は、男女とも時代が進むほど直線的に負の方向へ増加した。すなわち、時代が進むほど時代の影響が脳卒中発症を防ぐ傾向であったが、その効果は小さかった。一方コホート効果は一定の傾向が見られず、生まれた年が脳卒中発症に与える影響は小さかった。 次に、30歳以上の脳卒中発症数(初発)を2010~2030年まで推計した。1990~2009年までの5歳年齢階級別の罹患率の変化率を最小2乗法で推定し、x年の5歳年齢階級別罹患率を「(2005~2009年罹患率)×(1+変化率(x-2005))」より推定した。推計発症者数は2010年国勢調査人口および将来推計人口(平成24年1月推計:出生中位死亡中位)に推定罹患率を年齢階級別に乗じて算出した。結果、30歳以上の脳卒中発症者数は、20年間で男性:26,572名(2010年:101,527、2030年:128,099名)、女性:35,154名(2010年:82,852、2030年:118,006名)増加すると推計された。
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