研究課題
うつ病を代表とする気分障害は、年間有病率が3%であるとする報告があるなど、非常に頻繁に見られる病態である。一方で一般的に用いられている薬物療法は、その効果発現に2週間程度かかるなど、急速な回復を必要とする重症例で治療選択に限界があった。一方で、睡眠覚醒リズムは、気分障害だけでなく、多くの精神疾患の病態と密接に関与すると考えられ ている。実際、断眠療法・光療法などの精神疾患に対する非薬物療法は、薬物療法よりも効果出現が早いことが知られている。面白いことに、抗うつ効果は断眠・光療法などの投与時刻に依存することが知られている。現在、断眠療法・光療法が一般的に広く用いられていない理由として、その機序が十分に明らかにされていないことや、投与時刻依存性など薬物療法にない特性があることが挙げられる。これらの機序・特性を明らかにすることは、うつ病の治療選択性を広げ、社会に貢献できる可能性が高い。この為、本研究では、これまで明らかにされていない断眠療法・光療法の効果とその時刻依存性について、分子レベルから明らかにすることを目的とした。また、 同様に急速な治療効果が認められる電気痙攣療法についても、その投与における時刻依存性およびその分子メカニズムについて解明することを目的とした。本年度の実験では、動物モデルにおいて断眠・光刺激などの刺激により脳内で転写誘導される遺伝子群の発現量定量できる定量系の作成を行った。刺激誘導性が広く知られている遺伝子の他、細胞ごとの体内時刻とも言える時計遺伝子の転写量の定量系の確立を行った。
3: やや遅れている
遺伝子定量実験の条件設定を行う為、サイバーグリーンを用いた定量的リアルタイムPCR解析を行った。本実験では多数の遺伝子を対象にする一方、発現量が極端に少ないもの、あるいは延期配列が類似したものもも対象にせざるを得なかった。このため、感度・特異度の高いプライマーセットの確立を行う必要が生じた。しかし、実際に行ったところ、複数の遺伝子で定量に問題があるという事態となった。研究を進めるにあたって、この現象の本質を見極めることが重要である為、再度実験系の組み直しが必要となった。
今後、感度・特異度の高いプライマーセットの確立を行う。一旦プライマーセットの確立をした後は、実際の動物サンプルからの定量を行う。一方で、刺激を実施する方法についても最善を期す。具体的に、断眠を行う方法については、文献によって断眠をさせる手技自体が、断眠以外の刺激となりうるとの議論もあり、睡眠科学の専門家と協議し最善の方法を実施する予定であり。
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Journal of Sleep Research
巻: 6 ページ: 517
10.1111/jsr.12167
不眠研究
巻: 2014 ページ: 33-37