研究課題/領域番号 |
25893112
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安彦 郁 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20508246)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | インターフェロンγ / PD-L1 / 卵巣癌 / NF-kB |
研究概要 |
免疫抑制分子PD-L1の卵巣癌細胞における発現と、免疫細胞浸潤を中心とした癌の微小環境との関係について、卵巣癌臨床サンプルを用いて免疫組織学的に検討した。すると原発巣よりも播種巣に間質内リンパ球が多く、腹膜播種においては、腫瘍間質内のCD8陽性リンパ球数と腫瘍のPD-L1発現との間に強い相関がみられた。以上より、腫瘍間質内浸潤CD8陽性リンパ球から分泌されるIFN-γが卵巣癌細胞のPD-L1発現を正に制御し、免疫逃避を通して腫瘍増殖に働いていると考えられた。 卵巣癌細胞株HM-1の皮下腫瘍マウスモデルおよび腹膜播種マウスモデルの腫瘍を免役組織染色およびフローサイトメトリーにて検討したところ、腹膜播種には腫瘍内にCD8陽性T細胞やCD4陽性T細胞が多数浸潤していることがわかったが、皮下腫瘍にはいずれも浸潤はわずかであった。そこでIFN-γ受容体をshRNAで発現抑制したHM-1を用いて検討したところ、腹膜播種モデルにおいて、IFN-γ受容体を発現抑制すると、腫瘍増殖が抑制され、マウス生存期間が延長することがわかった。また、皮下腫瘍にIFN-γを腫瘍内投与したところ、腫瘍の増殖が促進されたが、腫瘍のPD-L1発現抑制によって、腫瘍増殖作用は打ち消された。 以上の結果より、卵巣癌腹膜播種においては、腫瘍間質内浸潤CD8陽性リンパ球が分泌するIFN-γが卵巣癌細胞のPD-L1発現を誘導し、免疫逃避によって腫瘍の増殖につながっていることがわかった。 一方、各種抗癌剤投与により、ヒトやマウスの卵巣癌細胞株のPD-L1発現が誘導されることをフローサイトメトリーやウェスタンブロット法で確認した。このPD-L1誘導は、NF-kB経路を介していることが、NF-kBのウェスタンブロットおよびsiRNAを用いたノックダウンの実験で明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌におけるIFN-γ経路によるPD-L1発現亢進機構について、in vitroとin vivo双方で検討し、特にin vivoにおいて、卵巣癌微小環境での間質内CD8陽性リンパ球が分泌するIFN-γが癌細胞のPD-L1発現を誘導していることを示した。 また、NF-kB経路によるPD-L1発現亢進機構についても、複数の抗がん剤によってin vitro双方で検討し、IFN-γによるPD-L1誘導とは独立した経路で発現誘導していることを見出した。以上より、当初の平成25年度の計画についてはほぼ達成できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いて、chemo-immunotherapyの有用性の評価と、PD-1抗体療法の効果予測バイオマーカーを明らかにする。 バイオマーカー候補が単一遺伝子として得られない場合、single sample gene set expression analysisの手法を用いて、IFN-γシグネチャーやNF-kBシグネチャーを同定し、特徴的な遺伝子群の変化としてのバイオマーカー探索も行う。
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