研究課題/領域番号 |
25893115
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三上 統久 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (20710388)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / cAMP |
研究概要 |
本研究の目的は①制御性T細胞の機能におけるcAMPシグナルの役割,②制御性T細胞によって他の免疫細胞にcAMPシグナルが誘導される機序,③他の免疫細胞におけるcAMPシグナルの作用,について明らかにすることである.25年度の研究により,①について制御性T細胞内にcAMPが高濃度に存在することが確認でき,新たにcAMPシグナルの下流に存在するPKA経路やCREB経路の活性化も示された.また,②については制御性T細胞内でcAMP合成酵素の阻害を行うことで他の細胞へのcAMP誘導を阻害できる可能性も示唆されている.さらに①に関してはPKAを阻害することで制御性T細胞からの炎症性サイトカイン産生が引き起こされるなど,このシグナルが制御性T細胞の恒常性維持に寄与している可能性も示された.また,③における他の免疫細胞を抑制する機序について,制御性T細胞によるエフェクターT細胞からのIL-2産生抑制作用が制御性T細胞由来cAMPシグナルに依存している可能性も示唆されている.さらにcAMPシグナルが抗原提示細胞に与える影響についても評価が進んでおり,炎症性サイトカインの産生抑制や共刺激分子の発現低下に寄与する可能性を見出している.これらの結果から制御性T細胞におけるcAMPシグナルの役割は多岐に渡る可能性が示され,今後より詳細な検討を進めることで制御性T細胞の機能維持に必須の分子機序のひとつが明確になると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,cAMPが制御性T細胞内でその機能維持に寄与している可能性を示すことができている.またcAMPの下流に存在するシグナル分子に着目した検討からその分子機序についても解析が進んでいる.他の細胞へのcAMP誘導機序についても共培養系を用いた解析から分子レベルでの検討を進める用意が整いつつある。また樹状細胞やエフェクターT細胞におけるcAMPシグナルの役割も解明できている。以上のことからおおむね計画通りの進展だと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ制御性T細胞におけるcAMPの役割は周囲の細胞の機能抑制以上に制御性T細胞内における自身の機能維持に働いている可能性が高いと考えている.今後は特に項目①の制御性T細胞の機能におけるcAMPシグナルの役割に主眼を置き,その詳細な機能解析や分子機序解析を進める.具体的にはPKAシグナルを阻害した際のエピジェネティクスな変化やサイトカイン産生変化、制御性T細胞に特徴的なマーカーなどの発現変化について検討を行うことでその詳細な役割を明らかにする。また制御性T細胞の抑制機能についても共培養実験や移入実験を行うことで検討する。同時に項目②③についても①の結果から得られた知見を反映しながら詳細な解析を進める。
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