研究実績の概要 |
私は、私達が発見したRNAポリメラーゼⅡホロ酵素の構成成分である基本転写共役複合体メディエーターサブユニット、MED1とMED24が協調して働くことにより、エストロゲン受容体を介する正常マウスの思春期の乳腺上皮細胞増殖およびヒト乳癌細胞の増殖を特異的に担うことを報告した。本研究はこの成果を基盤に、乳癌モデルマウスと種々のMED1およびMED24変異マウスを用いて、MED1とMED24が乳癌の発症と予後、治療反応性・抵抗性などにどのように寄与するかを固体レベル・分子レベルで明らかにし、乳がん治療の新たな分子標的を探索することを目的として行った。 まず、MED1分子内の乳癌の発症・特性に関わるドメインを同定し、MED1の乳癌への関与を個体かつ分子レベルで明らかにするため、我々の保有する各種MED1変異マウス[MED1 KO, MED1(LX) KI, MED1(1-530) KI]を乳癌発症モデルマウスと交配して検討するため、マウスの遺伝的背景をFVB/Nに統一した。また、予備実験において、乳癌発症マウスの乳癌発症には24週齢以上の観察が必要であることを確認した。今後は若手研究(B) の交付を受け、検証に十分な個体数を揃えられるよう計画的に交配・観察し、MED1が野生型の乳癌マウスと比較して、週齢別乳癌発症率、乳癌の増殖速度の定量、転移の有無、生存曲線を検討する。また、SERMに属するTamoxifen、純粋なER拮抗薬であるFulvestrant、ErbB2阻害薬であるTrastuzumabを投与し、その感受性を検討する。 また、ERとMED1のN端をバイパスする分子CCAR1にも注目し、CCAR1KOマウスを作製した。KOマウスの作製は理化学研究所神戸の相澤慎一博士との共同研究により行い、平成26年度までにF1マウスが出来たところである。今後は表現型を形態的にスクリーニングするとともに、異常の見られる臓器・組織を詳細に調べ、MED1変異マウスと同様乳癌モデルマウスとも交配予定である。
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