研究課題/領域番号 |
25893141
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
武部 祐一郎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00714677)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | エナメル上皮腫 / 腫瘍間質 / CCN2 |
研究概要 |
われわれは腫瘍微小環境の重要性に着目し、口腔腫瘍、特に未解明な点の多い歯原性腫瘍の代表例であるエナメル上皮腫の分子病理学的研究と遺伝子解析を行っている。本研究は、腫瘍が分泌する成長因子は腫瘍の成長、腫瘍間質の制御に関与すると考えられているが、エナメル上皮腫の腫瘍成長のメカニズムを解明し、エナメル上皮腫の腫瘍増大抑制を目指した新規治療法を開発する事を目的としている。本年度は、腫瘍微小環境において腫瘍実質が分泌し腫瘍の成長、骨吸収に関わる因子に注目し、その中でも腫瘍間質を制御するCCN2、TGF-β、BMP4、Ki-67,骨吸収に関連するRANKL、CD68をターゲットとし、エナメル上皮腫における蛋白発現と機能解析を行った。エナメル上皮腫35症例を材料とし、CCN2、TGF-β、BMP4、Ki-67、RANKL、CD68抗体を用いた免疫組織化学的染色を行った。腫瘍実質でCCN2が強く発現している部位でのKi-67陽性細胞は多く、周囲の間質では線維の形成の強いfibrous typeの間質が見られ、Ki-67陽性細胞数が多く観察された。逆にCCN2が弱く発現している実質ではKi-67陽性細胞数は少なく、周囲の間質ではmyxoid typeの間質を示し、Ki-67陽性細胞数は少なく観察された。腫瘍実質におけるTGF-β、BMP4、RANKLの発現に有意な差は認められず、myxoid typeの間質内で強く発現しており、CD68陽性細胞数も多く見られた。また、ヒトエナメル上皮腫から樹立した細胞株であるAM-1細胞でのwestern blottingでCCN2蛋白発現、RT-PCRでCCN2遺伝子発現が認められる事を確認した。以上から、エナメル上皮腫は様々な成長因子を分泌しており、特にCCN2は間質の性状を変化させ、それに伴い骨吸収に差が出る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エナメル上皮腫の組織学的検討、免疫組織化学的検討を行い、H-E染色切片を用い、間質の性状の違いを確認することができた。また、免疫組織化学染色を行った切片からは腫瘍実質の分泌するタンパク質(特にCCN2)が腫瘍間質の性状に影響を与え、さらにその腫瘍間質の性状によって骨吸収に差が生じるという新しい仮説を立てる事が出来た。今後は症例数をさらに増やし、in vitroにおける実験系でエナメル上皮腫細胞AM-1を用いてエナメル上皮腫実質が分泌する成長因子により細胞形態、増殖能に与える影響を検討していく予定である。以上の事からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究によりCCN2がエナメル上皮腫細胞により分泌され、間質線維芽細胞に働きかける可能性が強く疑われた。そのため本年度はCCN2に焦点を当て、エナメル上皮腫が産生するCCN2が間質線維芽細胞に及ぼす影響と骨吸収への関与について検討する為、以下の3点の実験を行う。 ・エナメル上皮腫の組織学的解析と機能解析 エナメル上皮腫間質線維芽細胞に生じた変化とCCN2を組織学的に詳細に解析する為、エナメル上皮腫手術材料における遺伝子発現とCCN2蛋白質局在を観察する。組織を固定後、パラフィンブロック切片を作成し、動態変化に関与する蛋白質およびCCN2抗体を用いた免疫組織化学的染色を行う。さらに詳細に検討を加える為、in vitro実験系において、間質線維芽細胞へCCN2を添加し、間質線維芽細胞の動態、増殖能、細胞形態に与える影響について検討する。同時にRT-PCR、Western Blotting等で確認を行う。 ・CCN2抗体ならびにsiRNA を用いた阻害共生培養実験による作用因子同定 腫瘍細胞が産生する他の因子により、間質線維芽細胞が影響を受けたのか、CCN2が直接的に関与していたかを確認するためAM-1間質線維芽細胞共生培養系へのCCN2 siRNA導入および抗体添加実験により証明する。CCN2のsiRNA を共生培養実験系へ導入はLipofectamin RNAiMAX(Invitrogen)を用いて行う。評価については前実験同様、細胞の動態、増殖能、細胞形態に与える影響について検討する。
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