研究課題
われわれは腫瘍微小環境の重要性に着目し、口腔腫瘍、特に未解明な点の多い歯原性腫瘍の代表例であるエナメル上皮腫の分子病理学的研究と遺伝子解析を行った。本研究は、腫瘍が分泌する成長因子が腫瘍の成長、腫瘍間質の制御に関与すると考えられているエナメル上皮腫の成長メカニズムを解明し、腫瘍増大抑制を目指した新規治療法を開発する事を目的とする。本研究では腫瘍微小環境下において腫瘍実質が分泌し腫瘍の成長、骨吸収に関わる因子に注目し、その中でも腫瘍間質を制御するCCN2、TGF-β、BMP4、Ki-67、骨吸収に関連するRANKL、CD67をターゲットとし、エナメル上皮腫における蛋白発現を確認し、機能解析を行った。エナメル上皮腫35例を材料とし、 CCN2、TGF-β、BMP4、Ki-67、RANKL、CD67抗体を用いた免疫組織化学的染色を行った。腫瘍実質でCCN2が強く発現している部位でのKi-67陽性細胞は多く、周囲の間質では線維の形成の強いfibrous typeの間質が見られ、Ki-67陽性細胞数は多く観察された。逆にCCN2が弱く発現している実質ではKi-67陽性細胞数は少なく、周囲の間質ではmyxoid typeの間質を示した。腫瘍実質におけるTGF-β、BMP-4、RANKLの発現に有意な差は認められず、myxoid typeの間質においては強い陽性像を示し、CD68陽性細胞数も多く認められた。また、ヒトエナメル上皮腫から樹立した細胞株であるAM-1細胞でのwesternblottingでは、CCN2蛋白発現、RT-PCRでCCN2遺伝子発現が認めた。さらに、AM-1培養上精、rhCCN2をヒトエナメル上皮腫線維芽細胞から初代培養したASF細胞に添加すると、形態や増殖活性が上昇し、有為な差が認められた。以上からエナメル上皮腫では腫瘍実質から様々な成長因子が分泌され、特にCCN2は間質の性状を変化させ、それに伴い骨吸収に差が生じる可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Surgery Case Reports
巻: 10 ページ: 12-16
DOI: 10.1016/j.ijscr.2015.01.022
Oral Sci Int
巻: 20 ページ: 8-14
http://dx.doi.org/10.1016/S1348-8643(13)00008-6