本研究では、天然物の抽出エキスから抗線虫活性物質の単離、構造解析とその作用メカニズム解析を行うことを目的としている。本年度は昨年度サダソウより単離、構造解析したトリケトン構造を有する新規化合物(Compound A-D)の作用メカニズム解析と活性評価を行った。 トリケトン構造を有する化合物の標的分子として植物の酵素HPPD(4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenase)が報告されていたことから、線虫C. elengansに対しても類似した標的分子を持つと考え、線虫遺伝子のHPPDをコードするhdp-1を欠損した線虫を準備し単離した4種の化合物による致死活性を確認した。その結果、Compound B、Dの致死活性が消失することが明らかとなり、これらの標的分子はhpd-1である可能性が強く示唆された。一方で、Compound A、Cはhpd-1欠損株に対しても野性株と同等の致死活性が見られたため、hpd-1とは異なる標的分子が存在すると考えられた。Compound A、Cの標的分子の解明は線虫遺伝子にEMS処理による変異を加え、Compound A、Cに対する耐性変異株を得たのちに変異箇所をSNPマッピングと全ゲノム解析により特定する方法で行うこととした。耐性変異株の取得に成功したので、今後は変異箇所の特定を進めていく予定である。 単離した新規化合物の活性評価を行ったところ、肺癌細胞A549やリーシュマニア症を引き起こすLeishmania majorに対しても強い生育阻害活性を示すことが明らかとなった。さらに、動物寄生性線虫や植物寄生性線虫に対しても同様に致死活性を示し、本化合物が抗寄生虫薬や農薬の候補となりうることが示された。現在、共同研究先に化合物を提供し、植物寄生性線虫に対する致死活性をもとに特許取得に向けた詳細な検討実験を行っている。
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