血管攣縮は、突発的に、脳・心筋梗塞などの重篤な血管病を誘発し、我が国突然死の主因として恐れられているにも拘らず、根本的な治療法が見つかっていない。実際の医療現場は、くも膜下出血後の脳血管攣縮のように『発症を予測していても対応策がなく患者さんの命を救えない』という悲惨な現状にある。早急に、血管異常収縮を選択的に抑制する特効薬を開発する必要があり、そのためには、血管攣縮のシグナル伝達機構を解明し、血管異常収縮の治療標的分子を見出す事が必須である。本研究では、新たな治療標的を探すため、血管攣縮の原因となる新規シグナル分子を探索・同定した。血管攣縮を引き起こす『SPC→Fyn→Rhoキナーゼ→異常収縮』経路の中、Fyn活性化からRhoキナーゼ活性化に至る機構については不明なままである。プルダウンアッセイで非活性型Fynとは結合せず、活性型Fynと選択的に結合する、新規Fyn下流分子としてpaxillin質量分析計で同定した。さらに、Fynとpaxillinの結合について、細胞内実験系とin vitro実験系で検証した。また、血管平滑筋細胞でpaxillinをノックダウンして、ノックダウンした細胞とノックダウンしていない細胞でSPCによる血管平滑筋細胞の収縮を調べ、paxillinをノックダウンした細胞はSPC刺激により収縮は抑制されたことがわかった。今後、Fynとpaxillinの相互作用点を絞り込んで、また血管異常収縮におけるpaxillinの機能を組織・生体レベルで検証し、新たな血管攣縮治療の標的となる特効薬開発の突破口を開く事を目指す。
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