研究課題
研究活動スタート支援
本研究では、本邦マダニ由来の細胞株樹立の試みと、マダニ由来細胞株を用いた、本邦マダニ類が保有するウイルスの網羅的探索を行う。本研究課題において、初年度はマダニ組織片を用いた初代培養の作出を中心に行った。初代培養に用いたマダニ種は、野外捕集タカサゴキララマダニ、フタトゲチマダニ、キチマダニを主とし、組織片にはマダニ卵または成マダニ諸器官(唾液腺、中腸、筋繊維等)を用いた。マダニ卵または成マダニ諸器官の表面殺菌には、塩化ベンザルコニウム液、70%エタノール、ポビドンヨード液を用い、各組織片へのダメージが少なく且つ充分な殺菌効果が得られる条件を検討した。組織片の初代培養のための基礎培地として、マダニ培養細胞に実績のあるL-15培地の他、蚊培養細胞に実績のあるVP-12培地、MM培地を用いた。また、培養液の添加物として、ウシ胎児血清、トリプトースフォスフェイトブロスの各々または混合物を様々な濃度(10~15%)で試みた。培養容器には、ガラスシャーレ、ポリスチレン製シャーレ、リジンコートシャーレ、コラーゲンコートシャーレを用い、組織片はすべて30℃インキュベーター内(暗条件)に静置した。ウイルスの網羅的探索に関しては、初年度は本邦マダニの捕集と保存に努めた。国内数地点においてマダニの捕集を行い、実験室に持ち帰り種を同定後、ウイルス分離用乳剤のため凍結保存した。
2: おおむね順調に進展している
各条件下でマダニ由来組織片の培養区を設けた結果、いくつかの区において、雑菌の増殖が見られないマダニ生細胞の維持が可能となり、充分な成果が得られた。しかし、これらはまだ著しい細胞増殖までには至っていない。そこで本年度はこれら生細胞の維持・継代を続けるとともに、他にマダニ培養細胞で実績のある培養液も新たに用いて、引き続きマダニ由来組織切片の作成を実施する。
最終年度は引き続きマダニ由来細胞株の樹立を目指すとともに、野外捕集マダニからのウイルス分離を実施する。野外捕集マダニを種または発育ステージに基づいてプール分けを行い、ウイルス分離用乳剤を調整する。乳剤を接種する培養細胞は、現段階でマダニ由来の細胞株が安定しないことから、当面は哺乳動物由来の培養細胞を用いる。なお、現在得られているマダニの生細胞片については、ウイルスを接種し、各ウイルスに対する感受性(感染性、増殖性)を調査する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)
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