研究概要 |
【研究の目的】近年、脾臓による肝線維化促進の機序が解明されつつある。既に我々も、肝硬変患者では肝線維化促進因子であるTGF-βが、脾臓において高発現することを報告している。しかしながら、硬変肝から発生する肝細胞癌において、その発生に脾臓が果たす役割はこれまでほとんど報告されていない。今回、肝発癌や腫瘍増殖過程における脾臓の関与を明らかにするために、ラット肝発癌モデルに対し脾摘、さらにRituximab投与による’’内科的脾摘’’を行うことにより、肝内の腫瘍発現の推移、免疫担当細胞変動やサイトカインの変化を解析し、肝硬変症例に対し脾摘を適応する際の基礎的根拠となるような知見を得ることを目的とする。 【研究実施計画】 平成25年度:肝発癌における脾臓の影響について検討 【研究実績】 臨床検体で肝発癌における脾臓内サイトカイン発現の影響の検討を行った。対象は当科で脾摘術を行った21例で、肝硬変合併肝癌症例7例と、肝癌非合併症例14例に分けた。脾臓中のHGF、VEGF、TNF-α、TGF-β、IL-6、IL-8のmRNA発現をreal time RT-PCRを用い測定し、比較検討を行った。また脾臓、肝非癌部のc-Met発現を免疫組織化学染色の発現強度(1+, 2+, 3+)で評価した。 肝癌合併症例では非合併症例に比べ、肝発癌促進作用を有するHGFの脾臓内における発現が有意に高値であった。VEGF、TNF-α、TGF-βは両群間に有意差を認めなかった。炎症性サイトカインで肝発癌促進作用を有するIL-6、 IL-8に関しては、IL-6は肝癌合併症例で発現が高い傾向を認め、IL-8は有意に高発現していた。また脾臓内c-Met蛋白発現に関しては両群間に差は認めなかったが、肝非癌部では非合併症例に比べ肝癌合併症例で有意に高発現していた。
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