本年度は、歯周疾患重症化のリスク因子を特定することを目的に、昨年度までの久山町生活予防健診時に収集されたデータをリンケージすることで、Porphyromonas gingivalisに対する血清IgG抗体価と歯周疾患の重症化との関連を縦断的に解析した。 対象は平成20年度の健診を受診した40-49歳の成人228名の内、4年後の健診を受診した204名(フォローアップ率89.5%)とした。ベースラインの時点で血清IgG抗体価の値に欠損がある21名を除いた183名(男性75名、女性108名)のデータを解析に用いた。目的変数には歯周疾患重症化の指標として4年間で3mm以上のアタッチメントロスの進行が2箇所以上発現したかどうかを、説明変数にはベースライン時のPorphyromonas gingivalis に対する血清IgG抗体価を、調整変数にはベースライン時の性別やBody Mass Index、血清C反応性蛋白値を同時投入し、ロジスティック回帰分析を行った。 4年間で歯周疾患の重症化が認められた者は16名(8.7%)存在した。多変量解析の結果、歯周疾患重症化のオッズは、Porphyromonas gingivalis に対する血清IgG抗体価が10増加するにつれて1.66倍(95% CI = 1.16-2.36)有意に上昇し、女性に比べ男性が4.04倍(95% CI = 1.20-13.62)有意に高かった。他の変数は有意差を認めなかった。 本研究から、Porphyromonas gingivalis に対する血清IgG抗体価と性別が歯周疾患重症化の予測因子となる可能性が示唆された。
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