研究概要 |
早期胃癌において、胃癌取扱い規約でpT1a(M)と表記される粘膜内癌には(1)粘膜筋板への浸潤を伴わない粘膜内癌と(2)粘膜筋板への浸潤を伴う粘膜内癌とが含まれる。粘膜内癌の中には稀ではあるがリンパ節転移を伴う症例が見られることから、胃癌の粘膜筋板浸潤の意義を明確にする必要がある。 我々の研究室での様々なヒト腫瘍におけるムチン性糖蛋白抗原発現の一連の研究において、膜結合型ムチンであるMUC1とMUC4の発現は不良な予後に関係し、分泌型ムチンであるMUC2の発現は良好な予後に関係することが明らかになってきており(Yonezawa S et al: Pathol Int 61: 697-716, 2011; Yonezawa S et al: Proteomics 8, 3329-3341, 2008)、最近、早期胃癌についてもMUC1やMUC4の発現が脈管侵襲やリンパ節転移に関連する予後不良の因子となることが解明された(Tamura et al: PLOS ONE 7 e49251, 2012)。 粘膜筋板浸潤の有無により分けた粘膜内癌と、粘膜下組織浸潤癌について、脈管侵襲の程度やムチンの発現を比較検討し、ESD適用範囲に対する病理学的裏付けを検証する。
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