研究課題/領域番号 |
25893196
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
廣川 聖子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (70331486)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 自殺 / 自殺予防 / 自傷 / 自殺未遂 / 訪問看護 / 訪問支援 |
研究概要 |
平成25年度は,文献検討および実際に自殺企図歴がある患者に訪問している訪問看護師への聞き取り内容に基づき,調査票を作成した。パイロットスタディとして,埼玉県内で精神科訪問看護を実施している訪問看護ステーション84施設および精神科病院116施設の計200施設を対象に郵送調査を実施し(平成26年2月),34施設(訪問看護ステーション20施設,病院・診療所14施設)から回答を得た(回収率17.0%)。 回答があった34施設中,自傷・自殺未遂事例への訪問看護を実施していたのは13施設(全施設中6.5%)であり,事例数は14事例であった。 14事例の概要について,性別は男性5名,女性9名で,年齢は30代3名,40代4名,50代3名,60代1名,70代以上2名であった。診断名は統合失調症7名,気分障害6名,発達障害1名,アルコール関連障害1名,無回答1名であった(重複あり)。居住状況は独居が6名,同居者ありが7名(施設入所1名含む)であった。 訪問看護導入の主な目的は,症状観察11名(78.6%),薬物療法継続への援助8名(57.1%),相談相手8名(57.1%),日常生活の援助6名(42.9%),生活リズムの確立6名(42.9%),その他(身体合併症の管理,社会資源の導入,引きこもり防止,家族ケア)であり,自傷・自殺企図の予防を目的としていた事例は7名(50%)であった。 訪問開始後の再企図は3名に認められ(再企図なし7名,不明・無回答4名),また希死念慮の訴えは14名中4名から聞かれていたが,再企図と希死念慮の訴えに相関関係は認められなかった。 この他,事例の特徴(対人関係,自殺リスク,アピール性,ストレス対処能力,援助希求能力),実際の支援内容(頻度,滞在時間,支援内容等),事例の支援に関与している社会資源,支援に際し感じる困難や配慮している点等についても尋ね,回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査内容の性質上,研究者の所属機関倫理審査委員会からの承認および調査票の修正に時間を要したことと,パイロットスタディを実施したところ回収率が17%と低く,回収率を上げるための方策を検討する必要があったことから,平成25年度中の本調査実施には至らなかった。 しかし本調査実施にあたっての改善点や,回答の傾向等を把握することができ,本調査をスムーズに実施することが可能になったと考える。 また,本年度実施予定である,当事者ならびに訪問支援の指示者である医師へのインタビュー調査についても,対象抽出の方法等,改善点を把握することができたことからも,本研究全体の遂行状況としてはおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は,自傷・自殺未遂歴のある精神科患者への訪問看護による支援実態について明らかにし,訪問による支援が自傷・自殺未遂の再企図にどのように効果があるか,また当事者及びその主治医にはどのような支援ニーズがあるのかを明らかにすることから,精神科訪問看護を活用した効果的な自殺予防対策システムの方法について検討することである。 パイロットスタディを実施した際,無回答で調査票の返送があった施設の中から,「訪問は実施しているが訪問看護としては実施していない」という意見も聞かれた。先にも述べたように,本研究の主な目的は,精神科訪問看護を自殺予防に有効に活用する方法を検討するための資料として,現状把握およびニーズ把握を行うことであり,訪問の場でどの程度,どのような支援が行われているか,またどのような支援が必要とされているかを知ることに意義があると考える。 そこで今年度は,昨年度中のパイロットスタディの結果をふまえ,「訪問看護」という表現を「訪問支援」とし,訪問看護という名称では活動していない施設からも回答が得られるよう改善した上で本調査に臨む。また回答が得られなかった施設には,はがきやファックス,電話等にて再依頼するなどの工夫をし,回収率の向上に努める。当初予定していた6か月後の追調査については今回は実施せず,実際にどの程度の頻度で支援機関が自殺企図事例に関わっているのか,その実態について明らかにする。さらに今年度は,訪問支援を受けている当事者ならびに訪問支援の指示者である医師に聞き取り調査を実施する予定であるが,当初の計画では質問紙調査の回答として挙がった事例とその主治医を対象としていたが,対象抽出の方法を変更し,研究者が過去に実施してきた研究に協力を得られた施設および団体に,基準に該当する当事者,医師の紹介を依頼する方法をとるものとする。
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