研究課題
高齢者において、未婚、独居生活、社会的ネットワークが少ない、他人との活動が少ないなどの社会的孤立が問題となってきており、認知機能低下と関連していることが示されてきている。しかし、社会的に孤立している人が必ずしも孤独感を感じているわけではない。実際に、社会的孤立よりも孤独感の方が認知症のリスクと関連していたという報告がある。高齢者の孤独感などの心理的要因は、認知症の行動・心理症状(BPSD)に影響を与えていると考えられるが、十分には解明されていない。そこで、まず60歳以上で発症した精神病症状(幻覚、妄想)を認める患者の特徴を調べ、特に独居との関係性を調べた。京都府立医科大学附属病院精神科・心療内科外来に2009年4月1日~2013年3月31日までの間に受診した60歳以上の外来患者1024名を対象とし、後方視的にカルテ調査を行った。60歳以上で精神病症状を発症した患者は157名で、15.3%を占めていた。原因疾患としては認知症が多く、視覚・聴覚障害を認める、女性、高齢であると発症しやすいことが示された。独居は高齢発症の精神病症状には関与していなかった。次に、認知症患者24名を対象にして、孤独感とBPSDとの関係性を調べた。孤独感とBPSDとの間に有意な相関は認めていなかった。独居生活の患者と同居者のいる患者との比較では孤独感、BPSDともに有意差は認めていなかった。独居生活の患者の方が孤独感が高い傾向があったが、不安は同居者がいる患者の方が高い傾向であった。これらから独居生活や孤独感はBPSDに関与していないことが示唆された。しかし、孤独感の調査においては対象者が少なく予備的な調査になっているため、今後対象者数を増やして調査する必要がある。BPSDの発生には孤独感よりも他の心理的・社会的要素が関与している可能性もあり、その調査も必要である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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