研究実績の概要 |
本研究は,養育行動の一つである応答性をとおして,父親の養育行動における適応過程を解明すること目的としている。近年,子どもの発達に父親の育児関与が影響力をもつことや,夫婦関係が父親の育児関与と関連することが示されている(福丸ら, 1999; 加藤ら, 2002)。これらの先行研究は父親の養育行動を取り上げたものであるが,父親の応答性や,父親と母親の応答性の発達プロセスに違いはあるのかについて検討したものではない。母親の発達を父親に適用すると,父親も発達する存在であると考える。父親の応答性は発達するのか,発達するとすれば父親と母親の違いはあるのか。父親の応答性は子どもの発達に影響するのかといった問題は全く研究されていない。 本研究の特色は,第1に第1子をもつ父親と母親を対象に夫婦同時に面接し,父親の養育行動における適応過程を捉えることである。夫婦同時に面接を行うことで,父親がどのような動機で,どのように子どもを世話するのか。そして,誰の,どのような助言が父親の養育行動に影響しているのかについて詳細が明らかになる。このようなマイクロ的な視点で父親の養育行動について取り上げた研究は父親研究において皆無である。第2の特色は,生後数ヶ月までの期間,面接をくり返し実施することである。父親の場合,子どもの月齢によって育児をするものとそうでないものの差が大きくなると考えられることから,くり返し面接を行うことにより,その違いが何によるものなのかを明らかにできる。 研究対象者は,調査開始時に生後2ヵ月の乳児とその両親20組程度である。市町村で開催される両親学級に参加中の夫婦を対象に調査協力依頼をし,承諾の得られた夫婦に対し出産後2ヵ月と4ヵ月の時点で家庭訪問する。本年度は,研究協力施設を確保すると同時に,予備調査を行いインタビューマニュアル及び分析の枠組み(カテゴリー)を作成した。
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